「勝つ」動きと「負けない」動き
今回は、久々に抽象的なコラムを書いてみた。この記事で述べるのは、「構築を組むなら、勝つ動きがしたいのか、負けない動きがしたいのかはっきりさせる必要がある」というお話。
突然だが、ポケモンのシングル対戦というルールを整理すると、「パーティ6体から3体を選出し、ダメージを稼ぎあった上で、相手より先に3体倒した方が勝ち」というルールとなる。
このルールから考えると、「勝ち」を目指す上で、2パターンの考え方があり得る。
1つは、相手より先にアドバンテージを取って勝つ、という考え方。
もう1つは、相手に負けなければ自動的に勝てる、という考え方である。
前者の「勝つ」考え方に則るならば、「勝ち筋を追いかける」という動きが基本となるはずである。時には(リスクに見合うリターンが取れる場合は)やや無謀な一点読みや運ゲーに走る場面もあるかもしれない。所謂ヤンキープレイや交換読み交換、といった動きもこちらの考えに基づく動きであろう。
一方で、後者の「負けない」考え方に基づくならば、「負け筋を無くす」というプレイングが原則となるはず。つまり、自分の布陣を崩されないように注意を払い、相手の崩しや自分の負け筋を考えつつ立ち回るのが基本となるはず、という事である。俗に言う「安定行動」とは「負けない」為の行動だと考えている。
そしてこれらの動きこそ、タイトルに掲げた「勝つ」動きと「負けない」動きである。
ポケモンにおける行動の大半は勝つ動きと負けない動きの少なくとも一方に該当するはずである。
これら2つの動き、実際の対戦では、受けループなどの極端な並びでもない限り、どちらの動きも使う可能性がある。
具体的に言えば、終盤において、不利な側は少しでも巻き返して勝ち筋を追うべく「勝つ動き」に打って出なければ勝てないし、一方で有利な側は捲られないように「負けない動き」を意識して立ち回る、ということである。
ではなぜわざわざ分類したのかというと、構築を組む時に、勝つ動きと負けない動き、どちらに重点を置くのか決めないと、構築が機能しない恐れがあるからである。
極端な事を言えば、受けループを作ろうとしているのに、その中にフェローチェやキノガッサを考え無しに入れても機能しない、という事である。
負けない動きに特化した構築である受けループに勝つ動きを主眼とするフェローチェやキノガッサを採用しても、動きがそもそも噛み合っていないのだから、うまく機能しない可能性が高い、という事である。
ちなみに、この「勝つ動きと負けない動き」という理論を用いて、受けループにメガゲンガーが採用される理由も説明出来る。
あのポケモンは、相手の崩しポケモンを道連れで連れて行く能力がある。これを言い換えると、相手の勝つ動きを潰して、こちらの負けない動きを展開出来る、という事である。
即ち、一見すると低耐久で受けループに向かないメガゲンガーであるが、実は「負けない動きを展開出来る」という点で、負けない動きに特化した構築である受けループとマッチしていた、というわけである。
さて、本題に戻ると、勝つ動きがしたいのか、あるいは負けない動きがしたいのか、という点を明確にして構築を組む必要がある。
そうでなければ、何体かのポケモンが腐ってしまい勝てない、という事になりかねない。
ただ、勝つ動きを主眼とした場合、どうしても選出が窮屈になってしまい、それはそれで安定しない、という問題が考えられる。
これに対する対応策は2つ考えられる。
1つは「相手に対応する」という考えを捨て、勝ち筋を押し付ける事に特化する方法。
もう1つは、何体か守備的なポケモンを採用してバランスを取る方法である。
前者の方法については私に経験がないため言及は避ける。ここでは後者の方法について考える事にする。
勝つ動きを主眼とした構築に守備的なポケモンを採用すると、考え無しでは構築全体の動きとマッチしない恐れがある。
そうならないようにするには、仮想敵を定め、どのような勝ち筋を作りたいのか考えた上で守備的なポケモンを採用するのが良い、と考えている。
他の方の構築を批評できるほど私は偉くないので、自作の並びで説明する。
こちらの並びは、私が6世代で使っていた並びである。
この並びは、ヘラやマンダを通す、という勝つ動きを主眼においた並びである。
しかしこの構築において、HBゴツメクレセリアとHD奇石ポリゴン2は、耐久力に特化した守備的なポケモンである。
ここまでの考察通りなら、このクレセとポリ2は機能しない、と考えられるが、実際には非常に強く、選出率も高かった。
それは、これらのポケモンが「誰を処理してどのような勝ち筋に繋ぐのか」という事を明確にした上で採用していたからである。クレセは、バシャやマンダを止めてヘラを通しに行く枠だったし、ポリ2は厄介なゲッコウガを処理してマンダを通しに行く駒だった。
このような経験から、勝つ動きを重視した並びに守備的なポケモンを採用する場合でも、勝ち筋に結びつく形で採用すると機能させやすい、と感じている。
ここで留意すべき事は、「勝つ動きと負けない動きの両方を一手で実行出来る場合もある」という事である。
例えば電磁波。7世代においてはともかく、6世代以前においては、相手の高速アタッカーを止めつつ、こちらの低~中速のポケモンを通す、という役割を一手でこなす事ができた。この時、相手の高速アタッカーを妨害する、という負けない動きと、こちらの低~中速のポケモンを通す、という勝つ動きの両方を一手で実行出来ている、という事である。
以上の内容を踏まえた上で纏めると、今回言いたかった事は、「対戦における動きには勝つ動きと負けない動きの2種類があるよね」という事と、「構築を組む時はどういう風に動かしたいのか考えたほうが良いよね」という事の2点である。
私自身、最近は構築を考える際にこの事が頭から抜けてしまっていたので、戒めの意味も込めてここに書き留めておく。